糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の三大合併症のひとつで、成人の失明原因の第一位でもあります。糖尿病コントロールが悪い時期が5年以上続くと発症すると言われています。
糖尿病網膜症は、網膜の血管の異常から起こる病気です。初期はほとんど自覚症状がないため、気がつかないうちに病気が進行してしまい、ある日突然、眼底に大出血や網膜剥離を起こして、失明の危機にさらされることがあります。
早期発見早期治療が、失明を防ぐ重要なポイントになります。
糖尿病になると、血液中の糖分(血糖値)が高くなり、血液はドロドロで固まりやすい状態になっています。その状態が続くと血管に多くの負担がかかり、全身の細い血管(毛細血管)に障害が起こります。
網膜には、目に酸素を運ぶための毛細血管が縦横に走っており、高血糖によって網膜の毛細血管を詰まらせたり、血管の壁に負担をかけて眼底出血をしたりします。
こうして血液の流れが悪くなり、網膜に酸素や栄養素が不足すると、本来はない弱い新生血管が出てきます。新生血管は簡単に破裂や出血をするため、ついに硝子体出血や硝子体牽引、さらに網膜剥離へと進み、失明に至ります。
糖尿病網膜症のイメージ図
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日本眼科学会HPより引用
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糖尿病網膜症の初期段階では、血糖コントロールを上手に保てば自然に軽快します。視力に影響を与えることもありません。
しかし、それ以上に症状が進んでしまった場合には、レーザー光凝固術、硝子体手術といった外科的治療が必要になります。
レーザー光凝固術
レーザー光凝固術は主に網膜の酸素不足を解消し、新生血管の発生を予防したり、すでに出現してしまった新生血管を減らしたりすることを目的として行います。
外来通院で治療でき、点眼麻酔をしてから、1回15分程度、まぶしい感じはしますが、ひどい痛みはなく、安全に行えます。症状が進んだ場合は3、4回に分けて行います。
レーザー治療は、早期であれば かなり有効ですが、時期が遅くなると有効率が 50~60パーセントに低下します。この治療によって視力がよくなるわけではありませんが、網膜症の進行を予防する観点から大変有効な治療です。
硝子体手術
レーザー治療で網膜症の進行を予防できなかった場合や、すでに網膜剥離や硝子体出血が起こった場合に対して行われる治療です。
新生血管から出た血液を吸い出したり、出血の原因となる硝子体の場所を電気で凝固したり、剥がれた網膜を元にもどしたりすると同時に、剥がれる原因となる場所にレーザーをあてて再出血や網膜剥離の再発を予防します。
顕微鏡下での細かい操作を要し、高度なレベルの手術となります。